アリやハチの子はよく泣くほどよく育つ⁈

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元論文
Coevolution of larval signalling and worker response can trigger developmental caste determination in social insects
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.09.27.559532v1.article-info

姉が弟や妹の世話をする

アリや一部のハチは集団で生活しており、姉が働きアリや働きバチとなり妹や弟の餌を採ってきたりお世話をしたりします。
基本的には子孫繁栄のために自分の子供を残す方が有利なのですが、働きアリや働きバチは通常は自分で子供を産むことはありません。
働きバチや働きアリは生物学の用語でワーカー(worker)と呼ばれます。直訳すると労働者です。

人間のような普通の有性生殖の生き物であれば母親の遺伝子の内の50%と父親の遺伝子の内の50%が掛け合わされて子供ができるのですが、アリやハチは仕組みが異なります。
アリやハチのオスには父親がおらず母親の遺伝子の内の50%のみを持っています。そしてメスには母親の遺伝子の内の50%と父親の遺伝子の内の100%が受け継がれます。
そのため、自分の子供よりも弟や妹の方が自分と同じ遺伝子を持っている割合が高くなります。
つまり、弟や妹のために働く方が自分の子供を産むよりも子孫繁栄において有利なのです。
またアリやハチのワーカーは人間と同じように役割分担をして仕事に取り組んでおり、同じ種類でも役割に応じて体格が異なることもあります。
例えばマルハナバチというハチのワーカーでは体重が10倍も違っていたという報告もあります。
集団生活を行うアリやハチにおいて体格差はどのような仕組みで生じるのでしょうか?

体格差が生じる仕組み

10人の赤ちゃん

幼虫のときにしっかり栄養を取ることができた個体ほど大きくなる可能性が高いです。
しかしワーカーは幼虫たちに平等にごはんを与えようとします。
それなのになぜ、体格差が生じるのでしょうか?

ワーカーは幼虫の行動や化学物質による信号を頼りにお世話をします。
人間の赤ちゃんが泣くことによって「お腹がすいた」「おしめを変えてほしい」などのメッセージを発するのと同じです。
想像してみてほしいのですが、もし10人の赤ちゃんを1度に育てているとしたらどんな子のお世話を優先的に行うでしょうか?

一番よく泣く子に最も手をかけるのではないかと思います。
ハチやアリも同じです。
最も-よく泣く-信号を発する幼虫に多くのごはんを与え、重点的にお世話をします。
親やワーカーから見ると子供たちは栄養や衛生の不足を訴えて泣いているため、泣く子に手をかければある程度均一に育つはずです。
しかし、実際にはハチやアリでは大きな体格差が生じます。

赤ちゃんも周りに気を遣う

集団の規模が大きいほど役割に応じた体格差が生じやすく、規模が小さいと体格差も生じにくいと言われています。
なぜなら、小さな集団では、少数の「大型特殊ワーカー」への投資は、より多くの「小型ワーカー」への投資に比べてリスクが高すぎるからです。

体格差があると集団に対してどんな影響が生じるのでしょうか?

ハチやアリのワーカーは体の大きいものは食べ物を採りに行く役割を担い、小さいものは大きいものが採ってきた食べ物を幼虫に食べさせたり、衛生的なお世話をする役割を担う傾向があります。
このように体格差は役割分担の指標となり、より効率よく群れを運営できるようになります。
つまり体格差は集団にとってあった方が良いものなのです。
なので、能動的に体格差を生み出すように進化した可能性が高いです。
そのためには基本的にワーカーは幼虫のごはんを平等に分配するという仕組みに抗う必要があります。

ワーカーは幼虫の発する信号を頼りに空腹かどうかを判断します。
幼虫はこの仕組みを逆手に取ったのです。
最初にごはんを与えられた幼虫は自分が空腹であるという信号を強く発信し続けます。
反対に最初にごはんをあまり与えられなかった幼虫はあまり空腹の信号を出さなくなります。
このように幼虫が大きくなるか小さくなるかを選択して、ワーカーをコントロールしていたのです。

また大きくなることを選択した幼虫も蛹になるまでずっと空腹の信号を発し続けるわけではありません。
十分に大きくなると信号をあまり発しなくなるのです。
そうすることによって集団の資源を無駄なく効率よく分配することができます。
アリやハチの赤ちゃんは本能的に兄弟姉妹に気を遣うことができるのです。
最初に述べたようにアリやハチは兄弟姉妹で共有している遺伝子の割合が高いのでこのような気遣いができるのです。









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