モノクロの化石から大昔の昆虫の色や模様は分かるのか?

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元論文
The origins of colour patterns in fossil insects revealed by maturation experiments
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rspb.2023.1333

昆虫はカラフルだけど、化石はモノクロ

昆虫が初めて地球に現れたのは約4億年前だと考えられています。ちなみに恐竜は約2億年前です。
そのため昆虫にも化石が存在します。
化石を調べることによって恐竜と同じように、昆虫がどのように進化してきたのか?大昔はどんな昆虫がいたのか?といったことが分かります。
しかし、化石からは正確な色や模様を調べることは困難です。なぜなら化石はモノクロだから。
カラフルな化石を見たことがありますか?
図鑑や映画などで見られる恐竜の色や模様はあくまで想像で描かれたものです。
模様も本来のものから変化してしまっている可能性があり、化石を見ただけでは正確な判断ができません。
ですが、色や模様が分からないと見分けのつかない昆虫も多いのではないでしょうか?

大昔の昆虫の色や模様を知るためには、化石に見られる色や模様が形成されるまでの過程を調べる必要があります。
実は昆虫の化石からメラニンという色素が検出されており、メラニンは熱に強く、分解されにくいと言われています。
そこで南京大学の研究チームはメラニンに着目して、化石から大昔の昆虫の色や模様を知るためのヒントを探りました。

大昔の昆虫の色や模様のヒント

研究チームは2種類のカミキリムシとテントウムシの1種のはねを200°C、 250°C、 300°C、 350°C、 400°C、 450°C および 500°Cでそれぞれ24時間加熱し化石のような状態を再現しました。

加熱処理後の翅/Credit:Sengyu Wang et al.The origins of colour patterns in fossil insects revealed by maturation experiments.the royal society(2023)

その結果、250℃、300℃、350℃では3種ともほぼ真っ黒になりました。
また、電子顕微鏡で観察すると表面の細かい構造は保持されていましたが未処理のものよりも50%薄くなっていました。
興味深いことに、より高い温度では、元の色や模様が保持されていました。
テントウムシ(図a,b)では400℃と450℃で、カミキリムシ(図c,d)では500℃でよりはっきりと色や模様が見てとれます。
これはメラニンに乏しい部分が薄くなったり失われたりしたことによるものだと考えられます。
しかし、テントウムシの翅をさらに高温(500℃)で加熱するとほぼ真っ白で形も崩れてしまいました。メラニンの多い部分が白く残り、少ない部分は消失してしまったようです。

テントウムシとカミキリムシで変化が見られる温度が異なりますが、これははねの分厚さの違いを反映しているものであると結論づけられました。
これは化石から大昔の昆虫の種類を判別するためのヒントになるかもしれません。

これらの結果は、昆虫の化石に保存されているモノクロの模様などは、メラニンに乏しい部分の消失によって見られるようになったものであり、メラニンに富む領域とメラニンに乏しい領域の本来の分布を表していることを示しています。
真っ黒な模様も見られないようなものであったとしても、特に表面の細かい構造が保存している場合は、本来はカラフルでや派手な模様のある昆虫であった可能性もあります。

今回の南京大学の研究によって昆虫の化石に見られるモノクロの色や模様がメラニンに基づくものであるということが初めて実証されました。
今後、化石に残ったメラニンの比較などから大昔の昆虫の色や模様、生態、体のしくみがどのように進化してきたのかが明らかになっていくかもしれません。

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