元論文
Mimetic butterfly wings through mimetic butterfly eyes: Evidence that brightness vision helps Adelpha fessonia identify potential mates
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.10.05.561098v1
毒持ってます同盟
チョウの仲間には鳥などの捕食者にとって不味いものや毒のあるものもいます。
それらを食べた捕食者は不味いことや毒があることを学習して同じ種類のチョウを食べなくなります。
このようにして捕食者に対して自分たちは不味い・毒があるということが伝わります。
より多くの捕食者により早く伝わればチョウは食べられる可能性が下がります。
そのため不味い・毒があるもの同士で見た目を似せているものもいます。
これをミュラー型擬態といいます。
ミュラー型擬態によって捕食者から狙われる可能性が下がり、より安全な日常を獲得することができるのですが1つ難点が浮かび上がってきます。
別種同士で似たような見た目をしていると自分たちも見分けがつかなくなってしまうのではないでしょうか?
見分けがつかないと間違えて別種の個体と交尾をしてしまうかもしれません。
テントウムシやゾウムシという甲虫の仲間で交尾相手を間違えてしまい、繁殖が上手くいかなくなるという事例も報告されています。
チョウは視覚を頼りに周囲の情報を得ています。
見た目が似ているとやはり間違えそうです。
実際にチョウの目からはどのように見えているのでしょうか?
カルフォルニア大学の研究チームはミュラー型擬態の関係にあるチョウの視覚に関わる物質を調べることによってどのように見えているのかを再現しました。
チョウから見たチョウ
研究チームはAdelpha fessoniaとAdelpha basiloides(バジロイデスアメリカイチモンジ)と見た目が似ていて同じ地域に生息しており、ミュラー型擬態の関係にあるチョウの視覚を調べました。
翅の背中側の中央に白い一文字があり、前と後ろの端にオレンジ色の模様があります。
調査の結果、赤色域の色覚を持っていないことが分かりました。
そのため翅のオレンジ色の模様は見えていないと思われます。
オレンジ色の模様は捕食者に対する警告としてのみ役立っているのかもしれません。
そして色ではない別の視覚情報を頼りに同種を判別しているのかもしれません。
Adelpha fessoniaとAdelpha basiloidesの翅のオレンジ色と白い部分の部分の光の反射率を調べると、オレンジ色の部分では違いが見られず白い部分では違いが見られました。
またAdelpha fessoniaはこの白い部分の光の反射率の違いを識別することができるということが分かりました。
つまり色ではなく明るさを頼りに自身とそっくりな別種と同種とを区別していたのです。
むしろチョウの目には全然そっくりには見えていないのかもしれません。
同種のチョウを素早く見つけることで、別種のチョウに求愛する時間やエネルギーを無駄に費やすことがなくなり、交尾の成功率が高まります。
また捕食者である鳥にはこの明るさの違いを区別することはできないので、鳥の目には同じ不味い・毒があるチョウに見えます。
そのため、交尾の相手を間違えることなく捕食者から狙われる可能性を下げることもできていたのです。
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