元論文
Subcortical life, evolution of flattened body, and constrained mating posture in the earwig Platylabia major (Insecta: Dermaptera: “Anisolabididae”)
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0293701#sec009
樹皮の下で多くの動物が生活
樹皮の下では多くの動物が生活しています。
樹皮の下の狭い空間では体の大きさがかなり小さいものや薄く平なものなど形態が特殊化しているものが多く存在します。形態が変わることによって、行動や生態、生活史も変化する可能性が高いです。
ハサミムシも多くの種類が樹皮の下で生活しています。2012年から2013年にかけての野外調査で熱帯アジアのマレーシア半島、ペナン島での野外調査から32種のハサミムシが報告されており、そのうちの5科20種(62.5%)は枯れ木の樹皮の下からの採集されました。体が薄く平なものだけではなく分厚い種も樹皮の下から採集されました。
そこで慶応義塾大学の研究チームは樹皮の下から採集された薄く平な種(Platylabia major)と分厚い種(Nesogaster amoenusとParalabellula curvicauda)のハサミムシの交尾における生態や形態を比較しました。
この3種は同じ場所での共存も観察されています。
樹皮の下での交尾
研究チームは平面に上下が挟まれた空間での3種のハサミムシの交尾行動を観察しました。
ハサミムシのオスとメスの交尾器はともに腹部後部の腹側にあります。
(人間に近いイメージかと思います。)
分厚い種は互いに後ろ向きに向かい合いオスが腹部後部を180°捻って交尾器をメスに挿入しました。
薄く平な種では垂直の壁にいるオスが腹部を背側に反らせ、反対側の壁に止まっているメスに交尾器を挿入しました。
分厚い種では上下の挟まれていない平面上でも交尾と受精が確認できましたが薄く平な種では全く交尾がなされずメスも受精していませんでした。
薄く平な種は腹部後部を捻ることはできないため、樹皮の下のような上下に挟まれた空間でないと交尾ができないようです。
腹部の筋組織の構造を調べると、3種とも基本的に同じ構造をしていました。
しかし、薄く平な種では薄い腹部の中に筋肉を収める必要があるため、分厚い種とは微妙に筋肉の付き方が異なっているのかもしれません。
また分厚い種の腹部は薄く平な種と比べてかなり短く、サイズが小さいため、樹皮の下のような狭い空間を利用することができるのだろうと考えられています。
筋肉の付き方や体の大きさなどの違いによって交尾行動の違いが生じたのかもしれません。
薄く平な種のオスにはアレが2本ある
薄く平な種のオスは交尾器を2つ持っていて、左右横並びについています。
左右の使用頻度はほぼ同じですが、片方を交尾に備えて”準備”しているようです。
(おそらく人間に近いイメージかと思います)
左右に偏りが見られる種もありますがPlatylabia majorではメスの交尾器の構造から左右どちらでも交尾ができるようになっています。
研究チームはオスの片方の交尾器を切除しても正常に交尾ができるのかどうかを確かめました。
その結果、切除されてないオスに比べて成功率は下がりましたが、79.5%が受精に成功しました。
また”準備”されている方を切除してもされていない方を切除してもほぼ同じ結果でした。
また分厚い種では雄の交尾器の数は人間と同じで1つです。
このような交尾器の違いも交尾行動に違いをもたらす要因になっているのかもしれません。
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