蚊は体に悪い食べ物が好き?!

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元論文
The paradox of plant preference: the malaria vectors Anopheles gambiae and Anopheles coluzzii select suboptimal food sources for their survival and reproduction
https://www.biorxiv.org/content/10.1101/2023.09.18.558223v1

どうやって食べ物を選ぶ?

みなさんはどうやって食べ物を選んでいるでしょうか?

・おいしいかどうか(味や匂い)
・インスタ映えするかどうか(見た目)
・すぐに食べられるかどうか
・お腹いっぱいになるかどうか
・値段が安いか高いか
・健康にいいかどうか
などなど、さまざまな基準で時と場合や価値観に合わせて選んでいるかと思います。

では、人間以外の動物はどうでしょうか?
生き残ること・子孫を残すために最適な選択をすると言われています。
つまり、基本的には「健康にいいかどうか」が最も重要視されます。

実は、人間の血を吸う蚊も自分が食べるものを選んでいます。
血を吸うのは産卵前のメスだけで、それ以外はさまざまな植物の花の蜜や果実、葉や茎の汁を吸います。吸うものの種類によって摂取できる栄養の種類や量も異なります。
過去の研究でマラリアを媒介する蚊の生息地の植物の種類やそれぞれの存在量が寿命や繁殖率に影響を及ぼすということも分かっています。
蚊の食べ物として体に良い植物の種類などは調べられていますが、蚊が体に良い食べ物を選んでいるのかはほとんど分かっていませんでした。
そこで、フランス国立衛生医学研究所の研究チームは蚊に4種類の食べ物から1つを選択させてその後の生存率やメスの受精率を比較しました。

蚊の好きな食べ物

蚊は体に良い食べ物を選ぶのか?

蚊に食べ物として砂糖水(5%グルコース水溶液)と3種類の花を与えました。
まず蚊に食べ物を選択させずにそれぞれ与えたところ、砂糖水の生存率・受精率が最も高く3種の花もそれぞれ生存率・受精率にはっきりとした差異が見られました。
次に蚊にこれらの4種類の食べ物を選択させて、選んだものを与え続けました。
その結果、砂糖水は最も人気がなく、生存率・受精率が最も低かった花が1番人気でした。
体に悪い食べ物を選んでいます。実際に生存率・受精率も前述のものと同様の結果になりました。

蚊が食べ物を選ぶ基準

蚊はなぜ体に悪い食べ物を選んだのでしょうか?

研究チームはこの原因をさまざまな視点から考察しました。

第1に最も蚊にとって健康に悪かった花が蚊を上手くだましている可能性が考えられます。
「花」は植物にとって、蜜を吸いに来た昆虫や鳥などの体に花粉を付けて別の花に花粉を運んでもらうための器官です。
そのため「花」は花粉を運んでくれる昆虫や鳥にとってより魅力的であることが重要です。
蜜を吸うものにとっては体に良いものが最も魅力的ですが、栄養豊富な体に良い蜜をつくるためには相応の資源が必要になります。
しかし、実際に体に良いかどうかは食べてみないと分かりません。多くの生き物は体に良い食べ物かどうかは匂い・味・見た目で判断しています。
つまり花は蜜の栄養が乏しくても匂い・味・見た目で昆虫や鳥を魅了することができるのです。
なので今回最も蚊からの人気を獲得した花は匂い・味・見た目を魅力的に感じられるようにしているものであったのかもしれません。

第2に蚊は花を食べ物としてではなく休憩場所として選んでいた可能性が考えられます。
花は蚊よりも大きいこともあり、蚊にとっては食べ物であると同時に一息つける公園のベンチのようなものでもあるのです。人間に例えるとお菓子の家のようなイメージです。
蚊にとってはお菓子の家の食べ物としての良し悪しよりも居心地の良さの方が大事なのかもしれません。
実際に過去の蚊の毒餌の研究で最も殺虫効率の良い毒餌は食べ物としてだけではなく休憩場所として魅力的であったということが示されています。

第3に最も人気のあった花の蜜には蚊にとっての薬のような成分が含まれていた可能性が考えられます。
今回の実験では最初に選んだものをずっと与え続けました。
しかし、自然界では1種類の食べ物だけではなく、さまざまな種類の食べ物を食べている可能性が高いです。
そのため、蚊は最初に薬のような役割を果たす食べ物を選んだのかもしれません。
今回最も人気のあった花には抗菌作用のある物質が含まれていることも確認されています。

これらの考察から体に良いかどうか、栄養が豊富かどうかよりも他の要因の方が蚊が食べ物を選ぶ基準として優先されている可能性が高そうです。
今後、蚊がどんな要素を優先して食べ物を選んでいるのかを調べることによってマラリア対策にもつながっていくかもしれません。

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